冬はつとめて。
雪の降りたるはいふべきにもあらず、
霜のいとしろきも、またさらでもいと寒きに、
火などいそぎおこして、
炭もてわたるもいとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶の火もしろき灰がちになりてわろし。
冬の夜の、空さへさえわたりいみじきに、
雪の降り積りひかりあひたるに、
ひちりきのわなゝき出でたるは春秋もみな忘れぬかし
さて冬枯のけしきこそ、秋にはをさ〱おとるまじけれ。
汀の草に紅葉の散りとゞまりて、霜いと白うおける朝、
遣水より烟の立つこそをかしけれ。
年の暮れはてて、人ごとに急ぎあへる比ぞ、
またなくあはれなる。
午後九時頃、おおいぬ座のシリウス(天狼星)がオリオン座の足元に昇ってくる。シリウスは光度マイナス一・五等で、全天一番の明るさを持つ。ふたご座、こいぬ座も加わって冬の星座の主役がそろう。オリオン座の三つ星の下に散光星雲(メシエ42)が淡い光を放つ。おうし座の一等星アルデバランより少し上にはプレアデス星団(すばる)があり、視力のよい人は六つの星を数えることができる。
海神ポセイドンの命令で海魔ティアマト(くじら座)はアンドロメダ姫に襲いかかったが、天馬ペガススにまたがった勇士ペルセウスに退治された。
大寒の頃、南の空にオリオン座の星々がきらめく。右上がりに並んだ三つ星の左上にベテルギウスが赤く、そして右下にリゲルが青白く光を放っている。オリオン座の周辺には、ベテルギウスを中心にして六つの一等星が六角形をつくり、星空の巨大な宝石のようである。このうち、ベテルギウス、シリウス(おおいぬ座)、そしてプロキオン(こいぬ座)を結ぶと冬の大三角ができる。
ギリシャ神話に登場する狩人オリオンは、女神アルテミスの放った大さそりの猛毒にかかり息絶えた。オリオンはその後、星座になったという。
立春を過ぎるとカシオペヤ座は北西に傾き、かわって北東の空に北斗七星(おおぐま座)が現れる。春を告げるしし座も出て、一足早く春の到来となる。しし座の鎌の形の先端は一等星レグルスで太陽の通り道である黄道上にある。真南の空には、りゅうこつ座のカノープス(老人星)が地平線上ぎりぎりにあるが、空気が良く澄んで透明度の高い時でないと見つけるのは難しい。
二つの明るい星カストルとポルックスはギリシャ神話の双子の勇士。日本でも昔から、きんぼし様・ぎんぼし様、めがね星、兄弟星と呼ばれた。