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方言(一)

1総説

日本の方言はその長い歴史を反映して、まことに多彩である。「古事記」「万葉集」の時代から、方言の存在が認められる。長い歴史を経過して、方言の発展する時代もあれば、衰退する時代もあった。人口の流動も、各時代さまざまな様相を呈した。

方言の発生は、各地の独自の言語変化に由る。そのほか基層語の差、他方言からの影響の遅速なども考慮する必要がある。

2方言の区画

方言的特色は、音韻、表記、語彙、文法、意味の各分野、さらには言語行動についても現れる。それを総合的に観望し、全国が巨視的にどのような代表的な方言に分割されるか、それを地図の上に反映させようとするのが方言区画の考え方である。

方言区画には当然各研究者の方言観が反映する。事実、日本の方言区画には諸説がある。ここでは、方言研究の母と言われる東条操(一八八四〜一九六六1884~1966)の最終案を示すことにする。本州の東西方言を分ける方言境界線の具体例を、上に下に図示した。

3方言への関心

風土記の方言記述、万葉集の東歌・防人歌は、日本人が昔から方言に注目してきたことを示している。源氏物語にも、方言に言及した記事が見える。近世初頭、キリシタン宣教師たちの作った日葡辞書には九州方言についての言及があり、ロドリゲス日本大文典にも、全国の方言概況や東日本のことばの特徴についての記述がある。近世には各地で方言集が作られ(仙台言葉以呂波寄・尾張方言・筑紫方言など)、全国方言辞典としての「諸国方言物類称呼」も刊行された。方言をとりいれた文学作品(「膝栗毛」「旧観帖」「鄙通辞」など)も作られるようになった。

近代には、本格的な方言研究が興り、方言文学作品も多い。最近は、テレビドラマなどにもよく方言が登場する。方言は見直されるようになり、各地の方言を競う方言大会なども行われるようになった。

全国方言区画

挿絵:「全国方言区画」 挿絵:「全国方言区画地図」

語法から見た東西方言境界線

挿絵:「東西方言境界線地図」

上図は東西両方言の対立を示す文法的事象を図示したものである。
対象は次の五項目。

(1)打消表現

雨が降るので行かない

〃行かん(行かぬ)

(2)指定表現

わたしのはこれだ

〃ぢゃ(や)

(3)形容詞連用形

雪が降って白くなった

〃白う(白しろ)なった

(4)一段動詞命令形

明朝六時に起きろ

〃起きよ(起きい)

(5)ワ行五段動詞音便形

私はこれをあの店で買った

〃買(こ)うた

方言で読む『坊っちゃん』

原文親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。

  • 北海道(南部漁村)
    • 親譲(ゆんず)りの無鉄砲(やんちゃ)で小供(わらし)の時(どぎ)がら損ばりしてる。小学校(しょうがっこ)に居(え)る時(どぎ)、学校(がっこ)の二階(にがい)がら飛び降りで一週間(えっしゅかん)ばり腰抜がしたごどある。なしてそったら馬鹿(ばが)だ事(ごど)したがど聞く人(しと)があるがも知れね。大した深(ふけ)ぁ訳(わげ)もね。
  • 青森県(津軽—弘前市)
    • 親譲りの無鉄砲で小供(わらし)の時から損ばりしてる。小学校に居(い)た時分、学校の二階から飛び降りて一週間ばり腰抜かした事あった。なしてそした無闇(うすけね)事したと聞く人があるかも知れね。特別深(ふけ)訳でもね。
  • 岩手県(中北部—盛岡市)
    • 親譲りの向(むご)う見ずで小供(わらす)の時(どぎ)がら損ばりすてる。小学校さへあってる頃(あだり)学校(がっこ)の二階(げあ)がら跳ね降(お)るで一週間(えっしゅかん)ばり腰(こす)抜がすた事(こだ)ある。なすてそんたな馬鹿(ばが)まねすたべど聞ぐ人ぁあるがもすれねぁ。別(べず)にどうだず事(ごど)もねぁ。
  • 岩手県(南部—平泉町)
    • 親がらの無茶(むっちゃ)で小供(わらす)の時(どぎ)がら損ばりすてる。小学校さへぁってだ頃(あだり)、学校の二階(げあ)から跳ね降(お)ずで一週(えっすう)間ばり腰抜(こすの)がすた事(ごだ)ぁある。なすてそんてぁな無茶(むっちゃ)すたど聞ぐ人ぁあっかも知れねぁ。別に深(ふけ)ぁ訳(わけ)でもねぁ。
  • 秋田県(雄勝郡皆瀬村湯元)
    • 親譲りの無鉄砲で小供(わらし)の時(じぎ)がら損ばししてる。小学校さ居(い)だ頃、学校の二階がら飛び降りで一週間程(ばし)腰抜(の)がした事(ごど)ある。なしてそんた危ねぁ事(ごど)したなだど聞ぐ人いるがも知れねぁども、そんたに深(ふげ)ぁ訳(わげ)なばねぇ。
  • 宮城県
    • 親譲りの無鉄砲(むてっぽ)で小供(わらす)の時(とぎ)がら損ばりすてる。小学校(しょがっこ)に居(え)だ時分(ずぶん)学校(がっこ)の二階(にげあー)がら飛び降(お)ずで一週間(えっすーかん)ばり腰(こす)抜がすたごどある。なすてほんな無態(むであ)なごどすたんだど聞(ち)ぐ人(すと)あっかも知(ひえ)ねぁ。別(べず)に深(ふげ)ぁ訳もねぁ。
  • 山形県(村山地方東根市)
    • 親譲りの無鉄砲で子供(がぎ)の時(とぎ)がら損ばりしてえる。小学校に居(え)だ時分(ずぶん)、学校の二階(がえ)がら飛び降っで一週間(えっしゅうかん)ばり腰抜(こすぬ)がしたこどある。なんしてほだな馬鹿(ばが)な事(ごど)をしたと聞ぐ人(しと)があっがも知(す)んなぇ。別段深(べずだんふか)え訳(わげ)でもなえ。
  • 福島県(伊達郡霊山町)
    • 親譲りの無鉄砲(むでぼ)でちちゃこい時(どぎ)がら損ばりしてる。小学校さあがってっ時(とぎ)、学校(がっこ)の二階(にがい)がら飛び降(お)っち一週間ばり腰抜がした事(ごど)がある。なしてほおだ無茶したって聞ぐ人あっかも知んに。特別(とくべず)深い訳(わげ)でもねぇ。
  • 茨城県
    • 親譲りの無鉄砲(むでっぽ)で、子供ん時(とぎ)がら損ばがししてる。小学校(がっこ)に居時(いっとぎ)、学校(がっこ)の二階(にがい)がら飛び降りで、一週間(いっしーかん)ばがり腰抜(ぬが)した事(ごど)があったっけ。何でそーた馬鹿(ばが)な事(ごど)したって聞く人あんがも知んねが、別(べず)に深い訳(わげ)はねー。
  • 千葉県(長生郡本納町)
    • 親譲りの無鉄砲もんで子供(がき)の時(とい)かい損ばいしてる。小学校の頃、学校(がっこ)ん二階(にけ)かい跳(わ)んね降(お)りて一週間ばぃ腰抜いた事がある。あでそんな無茶なことをしたと聞くもんがあいがんも知れねー。別(べつ)ん深(ふけ)ー訳があったでもね。
  • 栃木県
    • ねっからの無鉄砲(がむしゃら)で子供ん時から損ばっかししてる。小学校にいっとき学校の二階(にがい)がら飛び降りて一週間位腰抜がしたごどがある。なんでそんな無茶をしたと聞く人があっかも知んね。別段(べずだん)深え理由でもねえ。
  • 群馬県
    • 譲りもんの無鉄砲(むてっこ(じ))で、小供の時から損べえしてる。小学校の時、学校の二階(にけえ)から飛び降りて一週間べえ腰を抜かした事がある。なぜそんな無鉄砲(むてっこ(じ))したと聞く人があるかもしんねえ。別にどーこー無(ね)え。
  • 埼玉県
    • 親譲りの無鉄砲(むてっぽう)で小供ん時から損べえしてる。小学校に居(い)る時分学校の二階(にけえ)から飛び降りて一週間ぐれえ腰抜かしたことがある。なでそんな無闇をしたと聞く人があんかも知(し)んねえ。別段深(ふけ)え理由でもねえ。
  • 新潟県(刈羽郡)
    • 親に似て無鉄砲で子供ん時(どき)から損ばっかして居(え)る。小学校に通(かよ)てえた時(どき)、学校の二階(にかや)から飛び降るて腰をぶって一(えっ)週間も寝てたことがある。なんしてそんげん無茶をしたんだと聞く者(もん)があるかも知らん。別ね深(ふけ)ー訳があったんじゃーねー。
  • 石川県(南能登)
    • 親譲りの無鉄砲(むてかつ)もんで小供ん時(とっ)から損ばっかしとる。小学校(こ)に居(お)る時分な学校(こ)の二階(にかや)から飛降(とっぴょ)りて一週間程腰抜かいた事(こた)ある。何んでほんな無茶したがいと聞く人(した)あっかも知らん。これちゅー深い訳でもない。
  • 富山県(福光町高窪)
    • 親ん似て無鉄砲(やんちゃ)もんで、小供時(ちちゃいとつ)がら損ばっはりしとる。小学校(こー)ん居(お)った時分、学校ん二階から飛んで降(お)んでて一週間程腰抜(の)かいた事ある。何んでそい無茶苦茶(もちゃくちゃ)事したがじゃ聞くもんな居(お)るかも知れん。別に深い訳も無い。
  • 福井県(福井市上中町)
    • 親譲りの無鉄砲(むとー)なんで小供(ちえー)時から損ばっかして居る。小学校に居る時分、学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かしんた事がある。なんでほんな無茶やったんやと聞く人があるかも知れん。別に大(たい)した訳でもない。
  • 山梨県
    • 親譲りの無鉄砲で小供(ぼこ)ん時(と)っから損ばっかしてえる。小学校に居(い)た時分に、学校の二階(けえ)から飛(とん)び降りて、一週間ばっか腰(こしょ)う抜かしとう事(こん)がある。何故(なえ)そんねえの無茶あしたと聞く人があるかも知らん。別に深いわけでもねえ。
  • 長野県(松本市周辺)
    • 親譲(おやいず)りの無鉄砲(むてっぽ)で小供ん時から損ばっかしてる。小学校(しょうがっこ)に居(い)る時分、学校(がっこ)の二階(にけー)から飛び降りて一週間ばか腰(こしょ)う抜かした事(こたー)ある。何故(なんで)そんな無闇な事(こと)うしたかと聞く人があるかも知れね。別に深(ふけ)え訳でもねー。
  • 岐阜県
    • 親ね似た無鉄砲で小供(こども)ん時(どき)から損ばっかしとる。小学校ね居(お)る頃ね二階から飛び降りて一週間ばか腰を抜かいた事がある。どしてそんな無闇(たあけ)た事したかと聞く人があるかも知れん。そやけど別ね深いわけもない。
  • 静岡県
    • 親譲りの無鉄砲(むてっぽー)で小(ちい)せぁー時から損ばっかりしてーる。小学校に居(い)る時分学校の二階(にけあー)から飛(とん)び降りて一週間ばか腰(こしょ)ー抜かした事がある。なぜそんな無茶をしたかと聞く衆(しゅう)があるかも知れねーけーが、別に深(ふけ)ぁー訳もねぁー。
  • 愛知県(名古屋市)
    • 親から受け継いだ滅茶(めちゃ)で小供の時から損ばっかしとる。小学校(こ)に居(お)る時分学校(こ)の二階から飛び降りて一週間ばか腰を抜かいた事がある。何故(なんぜ)そんな滅茶(めちゃ)をやったと聞く人(しと)があるか知れん。別に深い訳でもない。
  • 三重県(伊勢市)
    • 親譲りの無鉄砲(むちゃくちゃ)で小供の時から損ばっかしとる。小学校に居(お)る時分、学校の二階(にかえ)から飛び降りて一週間程(ばか)腰を抜かした事がある。何故(なんで)そんな無茶をしたと聞く人があるかもわからん。別にたいした訳も無いんや。
  • 滋賀県(大津市)
    • 親からの無茶苦茶するちゅう性格で小供の時(とっ)から損ばっかりしとる。小学校(しょおがっこお)居(い)とる時、学校(がっこお)の二階から飛んで降りて一週間程腰が抜けた事がある。何故(なんで)そない無茶した言(ゆ)うて聞く人(しと)があっかもわからんけど、別にたいした訳があるのんともちがう。
  • 京都府(京都市)
    • 親譲りの無鉄砲で小供時(こどもんとっ)から損ばっかりしてる。小学校に居(お)るころ学校(がっこ)の二階(うえ)から飛び降りて一週(いっしゅ)間位腰抜かしたことある。何故(なんで)そんな無茶(むちゃ)したんやて聞く人あるかも知れへん。別に深い訳もあらへん。
  • 大阪府(和泉地方)
    • 親譲りの無鉄砲でなー、小供の時から損ばっかりしてんねーん。小学校(しょーがっこ)に居(い)てる時分やけど、学校(がっこ)の二階から飛び降りてなー、一週間ほど腰抜かしたことあるわ。何故(なんで)そんな無茶(むちゃ)した、て聞く人あるかもしらんなー。そやけど別に深い訳あれへんのや。
  • 兵庫県(神戸市)
    • 小(こんま)い時から無茶為(し)いで損ばっかしや。わいの無茶は親譲りやねんな。小学校の時分や、学校(がっこ)の二階から飛び降りて腰抜かしてしもてからに一週間程立たれへなんだ。何(なん)でそんな無茶演(や)ったんや言(ゆ)うて人に聞かれるけど、わけも何(なに)もあらへん。
  • 奈良県(桜井市)
    • 親譲りの無鉄砲(きかんきー)で小供の時(とっ)から損ばっかししとる。小学校(しょーがっこ)に居(お)る時分、学校(がっこ)の二階から飛っびょりて一週間程腰抜かした事がある。何故(なんで)そんな無茶したかと聞く人(しと)あるかも知らん。別に深い訳でもあらひん。
  • 和歌山県
    • 親譲りの無鉄砲(やんちゃ)で小(ちっちゃ)い時(とっ)から損ばっかりしてる。小学校に居(い)てる時学校(がっこ)の二階から飛び降りて一週間位腰を抜いてもたことがある。なんでそんな無茶をしたと聞きたがる人があるかもわからん。別に深い訳もない。
  • 鳥取県(境港市)
    • 父(とっ)つぁん似の親(あや)知らずで小せ(ほせ)時から損ばっかーしちょー。小学校(こー)に居(お)った時分(ずぶん)に学校の二階(にかえ)から飛び降りて一週間程腰抜かいた事があー。何故(なして)そげな無茶くそしたでーって聞く人間(にんげ)があーかもっ知(し)ぇん。たえして深(ふけ)訳でもね。
  • 鳥取県(出雲市)
    • 親譲(えず)ーの無鉄砲(もってぽ)で小供ん時から損ばっかーしとー。小学校(しょがっこ)ね居(お)ー時分、学校(がっこ)の二階(にかえ)かー飛んで降(お)ーて一週間(えっしかん)ばかー腰抜(のか)えた事があー。何故(なして)そげな無茶(もちゃ)したと聞く者(もん)があーかもっせん。別段深(ふけ)訳でもね。
  • 岡山県(岡山市)
    • 親譲りの無茶くそで小供の時から損ばーしょーる。小学校へ居(お)る時分、学校の二階(にかえー)から飛び降りて一週間程腰(こしゅ)ーを抜(ぬ)かえーた事がある。どしてそなぇーな無茶(むちゃー)したんなら言(ゆ)ーて聞く者(もん)があるかも知れん。別にたぇーした訳でもなぇー。
  • 山口県(熊毛郡上関町長島)
    • 親譲りの無鉄砲者(おーてっぱすもん)でのー、小(こま)ー頃から損ばっかししちょるんじゃがのー。小学校へ行っちょる頃にのー、学校の二階から飛んでのー、一週間ばっかし腰(こしょ)ー抜かした事があってのー。何故(ないて)そねーな無茶(むちゃー)せたんかと聞く者(もん)が居(お)るかも知れんがのー、別に深(ふか)ー訳もなーんじゃがのー。
  • 香川県
    • 親譲りの無茶(むちゃ)しいで、小供と時分(じゅぶん)から損ばっかりしとる。小学校に居(お)るとき、学校(がっこ)の二階(にかや)から飛び降りて、一週間ぐらい腰を抜かしたことがある。どしてそんな無茶(むちゃ)なことしたんかと問(と)う人がおるかもわからん。格別深い訳があるんでもない。
  • 徳島県
    • 親に似て無茶な子で小供の時から損ばっかりしとる。小学校に居(お)る時分、学校の二階から飛び降りて一週間ぐらい腰を抜かした事がある。どしてほんな無茶をしたんぞと聞く人が居(お)るかもわからん。格別深い訳でもない。
  • 愛媛県(温泉郡川内町)
    • 親に似て無茶で小(こんま)い時分から損ぎりしとる。小学校に居る時分学校(がっこ)の二階から飛び降りて一週間位腰(こしー)抜かしたことがある。なんでそがいな無茶したと聞く者(もん)があるかも知らん。別に深い訳でもない。
  • 高知県(高知市周辺)
    • 親譲りの無鉄砲(てんぽー)な者(もん)で、小供の時から損ばっかりしゅー。小学校に居(お)る時分学校の二階から飛び降りて一週間ばー、腰(こし)ょ抜かしたことがある。なぜほんな無茶(むちゃ)をしたと聞く人があるかも知れん。別に深い訳でもない。
  • 福岡県(糸島郡前原町)
    • 親譲(いえつき)の無鉄砲(ひょーし)もなか子(こ)で小(こま)か時から損ばっかりしとる。小学校に行きよー時、学校の二階から飛び降りて一週間程(ばかし)腰ば抜かした事のある。なしそげな無闇な事したとかいなって聞く人のあるかも分(わか)らん。別段(ほかい)深か訳(わき)ゃー無かとたい。
  • 佐賀県(佐賀市)
    • 親譲(ゆず)いの無鉄砲者(いきない)で小(こま)か時(とっ)から損ばかいしとー。小学校に居(お)った時、学校の二階(にきゃー)から飛び降いて一週間ばかい腰(こっ)そらきゃーた事のあー。何故(なし)そぎゃん無茶な事ばしたかて聞く人のあーこっちゃいも分(わか)らん。そぎゃんひどかこっちゃーなか。
  • 長崎県(長崎市浦上)
    • 親譲りん無鉄砲で小供(こどん)が時(とっ)から損ばっかりしとる。小学校に居(お)る時分、学校ん二階から飛び降りて一週間ばかり腰ば抜かした事のある。何故(なしてん)そんげん無茶ばしたかと聞く人があるかも分からん。格別深か訳でもなか。
  • 熊本県(熊本市近郊)
    • 親からの、無鉄砲者(とっぱもん)だけん、小供ん時分かる、損ばかっしとったい。小学校ん時い、学校ん二階からヒッ飛(と)うで、一週間ばっかる腰ば違(たが)わきゃあた事んあっとったあ。何故(なしい)そぎゃん無茶ばしたろうかち、聞く人(ふと)のおるかん知れん。別(べち)い深(ふきゃ)あ訳でも無か。
  • 大分県(臼杵市)
    • 親譲りん無鉄砲じ小供ん時(とっ)かる損ばっかりしちょる。小学校に出よった時分、学校ん二階かる飛び降(お)れち、一週間位腰(ぐれーこしゅー)抜かしたこつがある。何故(なし)そげな無茶をしたんかと聞く人があるかん知れん。別段(べつだん)深けー訳でんねー。
  • 宮崎県(宮崎市)
    • 親んでかい無茶苦茶ぢぇ小(こど)もん時(とっ)きゃい、損んばっかりしちょる。小学校に居(お)っ時学校(がっこ)ん二階(にけ)かり飛び降りちぇ一週(しゅ)間位腰(ぐれこしゅ)を抜かした事(こつ)がある。なしけそんげな無茶な事(こつ)したつかつちゅー者(もん)があるかん知れんが、そんげ深(ふけ)ー訳でんねつよ。
  • 鹿児島県(鹿児島市)
    • 親譲いの無鉄砲者(ぼっけもん)で小供(こどん)の時(とっ)かー損んばっかいしちょっ。小学校(しょうがっこ)い居(お)っとっ学校(がっこ)ん二階(にけ)かー飛っおじっ一週間(いっしゅかん)ばっかい腰(こしゅ)抜けた事(こっ)があっ。何故(ないごて)そげなぼっけな事(こつ)したとち聞(き)っ人があっかも知れん。別深(べちふけ)訳があっ訳でんね。
  • 鹿児島県(名瀬市)
    • 親譲(うやゆじ)りぬ無鉄砲(うあちゃぼあ)で小供(わらび)ぬ時(とうき)ーんら損(すん)べぇりすん。小学校なん居(をう)りん学校ぬ二階(にかえ)ーら飛(をう)どうっきてぃ降(う)りてぃ一週間程腰抜(べえりくしぬ)とーりたん事(くとう)ぬあん。何故(ぬが)うがすんとぅんじゃくんねん事(くとう)ばさるち聞(き)きゅん人(ちゆ)ぬ居(をうん)かも知れらん。別段程(かしちゅんふどう)ぬ深さん訳(わけ)んにんあ無(な)ん。
  • 沖縄県(糸満)
    • 親の代(うやんれー)からぬ、無鉄砲(やまぐやたく)とぅ、小供(わらび)しーんから損(すん)ぶかーんさっくん。小学校んかい居(う)る時分、学校ん二階(にーけー)から飛ぅんがーに、一週間程(ぶかーん)まぶやー抜(ぬが)ちゃるくとぅぬあたん。何故(ぬーんりち)、うんぐとぅやまぐさがんり聞(き)くる人(ちゆ)ぬうがら分(わ)からんしが格別(びち)ぬいめー、無(ねー)らん。

—平井昌夫・徳川宗賢編「方言研究のすべて」(一九六九1969年 至文堂刊)より抜粋—